複数後見のすすめ

任意後見契約を結ぶ際に、後見人受任者を複数指定するニーズがあります。
後見人の役割は「身上監護」と「財産管理」です。

*財産管理は専門職に任せたとしても、身上監護は親族に頼みたいというケース。
また、
*任意後見受任者として選任された方が本人とそれほど年齢が変わらないケース。
この場合、万が一後見人が先に亡くなった場合、法定後見しか手段がないリスクがあります。
(任意後見はご本人がご自身の判断で、選任するもののため、認知症になってからだと選任不可)

本人XさんにAさんBさん二人の後見人がついた場合、権限の行使の仕方として、いくつかスタイルがあります。
(民法859条の2)
①単独行使
AさんBさんそれぞれが単独で全権限を行使する。
②共同行使
AさんBさんが共同して全権限を行使する。
③事務分掌、権限分掌
担当する権限を決め、それぞれが決まった権限を行使する。

①はAさんBさんが方向性を良く理解し、矛盾が生じないようにする必要があります。
②はAさんBさんの意見が対立した場合は、業務が停滞しかねません。

特にAさんBさんのどちらかの死亡の為に複数後見を申し立てる場合、②にしてしまうと、
Aさん死亡の場合にBさんとの関係でも任意後見契約が一体として全部終了してしまいます。
「共同行使」(後見登記5五)は、任意後見契約が1つの不可分な契約になると解されているためです。

一方、①や③であれば(書面は1通で作成しても)独立の複数契約となります。
この場合、生存後見人については契約終了のリスクはありません。

③にした場合、担当者が亡くなると、その権限を行う者がいなくなる可能性がありますので、若い後見人に全ての代理権を単独代理の形で与えておくなどの契約の工夫が必要です。

また、契約の中でAさんBさんについての後見監督人選任の申し立ての順序を決めることも可能です。

ちなみに、法定後見人の共同行使と事務分掌の定め、及び任意後見人の共同行使の定めは、取引の安全にとって需要であることから登記事項とされています。(後見謄本に記載されます)


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