株式会社の現物出資

株式会社の設立をする際、その設立にかかわる手続きをする発起人は、出資をする必要があります。
ほとんどが現金であり、その出資した金額に応じて株を持ちます。
設立の際はこの出資金を入金した旨の通帳の記載の写しを提出する必要があります。

ところで、現金以外の財産を会社に入れ、株の割り当てを受けることがあります。
これを現物出資といいます。
発起人以外の人が株主になる(募集設立)ことも可能ですが、現物出資ができるのは、発起人に限られます。

そして、その財産は、車、パソコン、不動産など、その種類を問わないとされています。
第三者に対する債権や、特許権、経験知識(ノウハウ)、労務や信用でも可能とされています。
その価額がいくらか、評価が可能であればほとんどの財産が対象となるでしょう。

ここでのポイントは3点です。
*定款の記載が必要です。
*検査役の調査が必要となる場合があります。
*設立時に「資本金の額の計上に関する証明書」が必要です。

まず、現物出資をする場合は、必ず定款に記載する必要があります。
この記載がなければ、その効力は生じません。(会社法28条)
※定款記載例
(現物出資)
第〇条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産及びその価額並びにこれに対して割り当てる設立時発行株式の種類及び数は、次の通りである。
一 出資者 発起人〇〇〇〇
二 現物出資財産 横浜市青葉区〇〇町〇番地〇 宅地 〇〇㎡
三 現物出資財産の価額 金〇〇万円
四 割り当てる設立時発行株式 普通株式〇〇株

*現物出資をする際は発起人は公証人の定款認証の後裁判所に対し、検査役の選任の申し立てをする必要があります。→「検査役の調査報告書」。この検査役の調査が必要ない例外は次の通りです。
・全ての現物出資財産の総額が500万円以下である場合※→「取締役の調査報告書」
・現物出資財産が市場価格のある有価証券であり、定款に記載された価額が市場価格以下である場合→「有価証券の市場価格を証する書面」
・現物出資財産等について定款に記載された価額が相当であることについて、弁護士、公認会計士、税理士等の証明(不動産の場合、不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合→「〇〇士の証明書」
上の・の一つでも該当すれば、検査役の検査は不要です。

大した財産でない財産を高額に評価して、株の割り当てを受けることがあっては、設立後の会社経営にとってリスクな訳です。したがって、その財産の評価が妥当かどうか、その証明書の添付を必要とします。

また、ポイントの3点目ですが、現金はその金額で資本金の計上をされると思いますが、現物出資財産は、かならずしも定款に記載された金額が資本金の額として計上される訳ではありません。したがって、いくら資本金の計上がされたのか、その資本金の額の計上に関する証明書を必要とします。

現物出資は、現金がない場合でも、会社設立ができる点で、メリットがあります。
利用しない出資財産を現金に変えずに、そのまま有効活用できる点もメリットです。
しかし、その財産の価額が分かりにくいため、調査費用がかかり、トータルで考えると経費が増える結果になりかねません。
状況によっては一つの選択肢となりえますので、そういう出資のやり方があるという点を知っていただけましたら幸いです。

ちなみに、実務では、いきなり500万円をこえる金額で検査役を裁判所に申し立てるケースはあまりありません。

月が大変きれいな日に、子供と夜のお散歩をしたのが、本当に幸せな時間でした。ただあるいただけですが、ものすごく幸せでした。思い出しただけでも涙出てくるくらい、いとおしい時間です。


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