司法書士は「登記申請を代理する人=登記申請書を作って出す人」と思われていると思います。それはそうですが、むしろその登記申請の前提となる法律行為がきちんと成立しているのかどうかの確認を大切にしています。
売買であれば残代金支払いの場に立ち会ったり、ご本人から直接お話を伺ったり、それを証明するための書類を確認したり、しています。
先日、「売買の登記をしたい」とご相談受けた方のお話です。
よくよく聞いてみると、
二世帯住宅で娘と半分ずつ出して2分の1ずつ登記するはずであった。
→娘にお金が無かった。
→全部お母さんが払ってお母さんお1人の名義で登記をした。
→娘はこまごまとお金を返し続け、建てた費用の半額を払いきったので、今回
移転したい
というご事情でした。これは売買ではなくむしろ弁済ですよね。
「譲渡担保契約」目的物の所有権は債権者(お母さま)に移転し、履行期までに債務者が履行すれば、所有権は設定者(娘さま)に復帰するとする契約です。つまり、お母さまは娘さんが出すはずのお金を代わりに出して、その代わり所有権を取得しました。娘さんに対する貸金債権の担保として、家の名義を取得している状態です。
そして、娘さんは長い間かけてすこしずつ弁済して、ようやく所有権を取得した訳です。
設定時「登記の目的 所有権移転
原 因 年月日譲渡担保」
弁済後「登記の目的 所有権移転
原 因 年月日譲渡担保契約解除」
※所有権抹消で登記も可(この場合登記上の利害関係人の承諾書添付が必要)
抵当権などと違い、条文上の記載のない慣習上の担保権です。
似たようなものとして、登記留保というのもあります。
契約したけど、お金払ってくれるまで、移転しない。つまり、対象の不動産を担保にとっている訳です。
ご家族の間だと、お金の貸し借りもそこまできっちりしていないこともありますが、どういう経緯で所有権が移転したのか、お話を伺うと、最初ご本人がご希望の登記ではないことが多いです。そういうところに、私達は注意を払って仕事をしています。