里親制度と養子制度

先日ご相談にいらしたお客様は5人兄弟で、一番上の兄弟の相続でしたが、大きくなるまで血がつながっているとは知らなかったという方でした。生まれてすぐ、子供のいなかった親の兄弟の家に引き取られ、そこの子供として大きくなったということでした。

相続をやっていると、様々なご家族のご事情を伺うことが多いです。血がつながっていないご家族も思っているより沢山あります。

民法の後半には親族法と言って、配偶者、親子関係など、家族に関係する規定があります。
親子って、血縁関係だけではないんですよね。

万が一、親と一緒に暮らせない子供がどうなるのか、その万が一の親の心配を安心に変えることはできるのか、そんな自分の中でのテーマをずっと持っています。
なぜなら、それが、生き方や幸せにつながることだと思うから。民法は私たちの人生に直接かかわる法律です。

さて、親がいない子供たちの行く場所として「里親制度」がありますが、これと養子縁組について。
「里親制度」にはいくつか種類があり、代表的なものは「養子縁組里親」「養育里親」です。
「里親=養子縁組」と誤解されることが多いのですが、これは明確に別な制度です。
「養子縁組を前提とする里親」のことを「養子縁組里親」として区別しています。

養子とは身分法上も本当の親子ですから、血がつながっていない子供であっても親としての扶養義務が発生します。
したがって、里親をすることによる手当は出ません。最終的に養子縁組が認められるまでの期間の実費のみ支給があります。
それに対して養育里親は、手当が月7~9万、生活費5万前後、医療費や教育費は別に支給などとなっています。

また、養育里親は一定の研修を受講して登録することが義務づけられています。

さらに身分法上も親子になる縁組には「普通養子」と「特別養子」があります。特別養子は実親との親子関係も切れるため、普通養子より要件が厳しく定められています。
それが民法817条の2から11です。

・夫婦で養親になる必要がある。
・家庭裁判所の許可が必要である。
・子供に年齢制限がある。(以前は6歳未満。昨年の民法改正により15歳未満。15歳なる前から監護があり、事情があった場合は18歳未満)
・親は25歳以上
・6ヶ月以内の監護期間が必要

一概には言えませんが、一般的には子供にとって家庭的な環境の方が施設より望ましいと言われています。なぜなら実親と同様、決まった大人が常にそばにいて守ってくれることで「愛着障害」を防げると考えられているためです。

現在、必要とする子供に対して、里親の数は30パーセント台です。養育里親制度では18歳、延長して20歳になると自立を促されて解除になります。社会的な意味で可能な限り多くのお子さんを受け入れる里親が沢山いる一方で、実子に恵まれずに本当の家族として受け入れる里親もいます。

同じ里親でも大きく違った制度ですが、子供達にとっては、大切な居場所であり、親が頼れる身近な存在であることに違いはありません。

血縁関係がなくても、そんな家族に恵まれる子供たちが増えますように。



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