死後事務が財産の「処分」に該当するかどうか

相続財産の中に債務があった場合のお話です。例えば借金が1憶円。500万円だけ預金があった場合に、借金は放棄し、現金だけもらって使ってしまうことはできません。

放棄をする場合は、相続財産全体に手を付けることはできません。
処分した段階で、相続放棄はできなくなります。

とはいっても、残された方は亡くなった方の死後の手続きをすることになると思います。その際に、「処分行為」に当たる行為なのかどうか注意が必要です。

随分長い間疎遠だった父親がアパートで孤独死した場合、遺品の整理をしないとアパートのオーナー様に迷惑が掛かってしまう。ところがその父には借金があるのと、とにかく関わりたくないから放棄を考えている。そうした場合、アパート内にある家財を処分すると、「財産の処分」にあたってしまうのではないか。。
この場合、結論はとっても微妙です。

具体的にどのような行為が「処分」にあたってしまうのか、一つ一つみてみましょう。
*葬儀費用の支出:社会的に相当な範囲内であれば「処分」に該当しない。
*仏壇・墓石の購入:社会的に相当な範囲内であれば「処分」に該当しない。
*納骨・永代供養:社会的に相当な範囲内であれば「処分」に該当しない。
*債務の弁済:原則「処分」に該当する。
  「期限の到来した債務の弁済」は保存行為に該当し、処分には該当しない。
*家財生活用品の処分:「一般経済価格」を有する場合は「処分」に該当する。
*家屋の明渡し:賃貸借契約の解除を行った場合は、「処分」に該当する可能性あり。明渡しそれ自体は処分に該当しない。

少し難しい言葉もありました。上から4つめ「保存行為」とは、そのものの現状を維持するための行為です。相続財産の場合の債務の弁済は、だいたいこの「保存行為」に該当すると考えられますが、全体に占める債務の金額が大きい場合など、これに当たらないと判断された判例があります。

家財も経済的な価値がどれくらいあるかによります。

判断が難しいケースも出てくると思いますが、一度処分をしてしまうと、遡ってなかったことにはできませんから、取り返しがつきません。
頭のどこかに、処分に該当するかどうか注意するということを意識して、慎重に判断する必要があります。

最近では「死後事務委任契約」と言って、亡くなった後の事務を専門の業者であったり私達専門職に委任されるケースも沢山あります。受任者がその委任契約により行った行為が、ご本人の相続人の放棄を難しくする場合も考えられます!

とにかく、元気で。。祈るような気持ち。


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