遺贈関連判例(包括遺贈の判断)

相続というと、財産やお金の話と思われがちです。
でも、もともとは仏教の言葉。「相」は「姿」の意味で、姿が続く。「因果が連続して絶えないこと。姿を引き継ぐ」という意味です。

したがって、亡くなった方の立場を全てひっくるめて、「引き継ぐ」という意味合いが強いです。
「一部相続」という概念はあまりなく、だからこそ、「遺贈」と「相続」の登記があった時、先に「遺贈」の登記を入れて、残ったものを「相続」する順番で登記をする必要があります。

最近よくご紹介する「特定遺贈」と「包括遺贈」の違いですが、「包括遺贈」は「相続」に近い概念です。亡くなった方の負債も、権利義務も全て含めて、受け継ぐ。したがって、たとえ親族関係がなくても「相続人」の規定が適用になります。

包括遺贈:「全ての財産を〇〇に」「全ての財産を〇〇の割合でだれだれに」(割合的包括遺贈)
特定遺贈:「不動産はだれに」「預貯金はだれに」(財産を特定してそれだけをあげる書き方)

はっきりそれと分かる表現の場合は、区別がつきやすいですが、微妙な表現の時もあります。そして、その判断は「その意がくみとれるか」が基準となります。

一つ判例をご紹介します。(東京地平成10年6月26日)
「遺産のうち不動産の一部を妹(相続人)に、その余の財産全てをとある団体に遺贈する」という遺言について、この団体への遺贈が特定遺贈なのか包括遺贈なのか争われた事例。

東京地裁は「特定財産を除く相続財産(全部)」と言う形で範囲を示された財産の遺贈であっても、それがプラスの財産、マイナスの財産全てを包括して承継させる趣旨のものと読み取れる場合は、包括遺贈と解するのが相当であるとしました。

一部は他の人にあげても、残りは全てをひっくるめて承継させるという表現だからです。

相続(包括遺贈)とは、ただ単に財産をもらうことを意味するのではなく、「引き継ぐ」ことである。それが少し伝わりましたら幸いです。

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