直接取引につき、会社の承認を要しないとされた事例

登記の審査をする法務局では実体までは審査しません。
登記に必要な書類というのは法定されていて、それがきちんと整っているかどうかで判断します。
これを「形式的審査権」といいます。
ということは、個別の事情などは審査の対象にならず、有無をいわずに必要な形式を整える必要がありますし、逆にいうと、形式を整えていさえすれば、それが本当かどうかまで問われません。
(私達が代理人となる場合は、そこの事実確認は絶対行います。)

さて、会社と、その会社の取締役との取引を「利益相反取引」といい、その場合、会社の株主総会や取締役会の議事録が必要と以前ご紹介しました。


「利益相反取引(りえきそうはんとりひき)」とは?
会社の取締役はその会社の利益を追求すべき職責を負う人ですよね。
その職務を全うしようとすると、自分の個人の利益の追求が難しいという取引のことです。
会社と、個人の直接取引であれば、まさに、これに当たります。

この場合は、「議事録」が必要書類として法定されている訳です。



今回は、この例外です。このような直接取引の場面で、会社が一人会社であった場合は、例外的に「利益相反取引」に当たらないという判例があります。

「最判昭和45年8月20日 利益相反取引につき取締役会の承認を要しないとされた事例」
趣旨:会社と取締役間に商法265条所定の取引がなされる場合でも、右取締役が会社の全株式を所有し、会社の経営が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは、右取引によって両者の間に実質的に利害相反する関係を生じるものではなく、右取引については、同条所定の取締役会の承認を必要としない。」

今回、株式ではなく、合同会社でしたが、役員が1人、会社名までその方の苗字という、まさにれっきとした1人会社でした。会社の経営者が他にもいれば、承認決議は必要ですが、その旨の議事録はつけずに登記完了しました。

形式的審査権で審査される登記実務では、こういうことは珍しいのではないかと思います。

ヴァイオリン始めました!!



コメントを残す