相続の放棄と、「遺産分割の結果何ももらわない」は意味が違います。
放棄は家庭裁判所に申し立てをして、認められると最初から相続人でなかったことになります。
相続の放棄は一身専属的な権利です。
「権利または義務がその人に専属し、他の者に移転しない」ということです。
例え破産者であっても、本人が放棄します。
債務者が債権者の利益を害することを分かっていながら、自己の財産を不当に減少させる行為をした場合に、債権者の利益を守る為に取り消せる条文(詐害行為取消)がありますが、相続の放棄はこの「詐害行為」にあたらないとされています。(最判昭49・9・20)
つまり、破産した人が亡くなった方の相続人であり、財産を相続できる立場であったものを放棄した場合であっても、その破産者の債権者は債務者の判断を受け入れるしかないということです。
放棄したことにより、実際はもらえるはずのものがもらえなくなります。財産が減ってしまうこともあります。それでも、放棄というのは、亡くなった方との関係で、「相続人」という立場になるかならないかという「身分法」の問題になります。ですから、破産者であってもそうでなくても、本人が自分の身分関係を決定する権利を持っているのです。
一方、遺産分割協議は、黙っていたら相続人の共有になった権利を特定の相続人に譲渡する性質をもっています。したがって遺産分割協議は法律行為であるということができ、これは「詐害行為」にあたると解されています。(最判平11・6・11)
もし、遺産分割協議の結果、破産者が受け取れるはずの財産を受け取らない内容の協議だった場合は、破産者の債権者がその行為の取消を求めることができるのです。
相続人だった破産者が上記行為を行う場合、その当事者となるのは誰でしょう?
・【放棄】は、あくまで本人(=破産者)がします。
お話した通り、「身分権」による「一身専属的」な権利だからです。
・【遺産分割】は、破産管財人がやります。
これは法律行為であり、破産者の財産は管財人が本人に代わって管理すること
になります。
私が産まれた時に、祖母が作ってくれたものです。
それを、私の子供が着てる。
これも相続だ