所有権の仮登記の名義人は、第三者に自分が所有者であることを主張できません。(対抗要件なし)
だったら、なんでやるの?と思われるかもしれませんが、意外とその力は強力です。
例えば絵画の展示会などでも、いいなと思った作品が「売約済み」みたいな表示があることがありますよね。仮登記が入っていたら、まだ完全な所有権ではないけれども、将来は完全な所有権を取得する動きをしているということを世の中に公示している訳です。
その後に、売買でも抵当権設定でも可能ですが、その方達は、そういう「動き」を承知で買ったり担保にとったりしているということになります。
「承知」でやっている以上は、万が一自分の権利が失われても「仕方ないよね」と保護されません。
1.所有者A 乙区
2.所有権移転の仮登記B←A 1.抵当権設定D(甲区2より前の日付)
3.AからCへの売買 2.抵当権設定E(甲区2より後の日付)
このようなケースで、B←Aの仮登記の本登記が入った場合、新たに順位番号ができるのではなく、2番の仮登記の下に本登記の旨の登記が入ります。
この登記の際、Cは利害関係人であり、Cの承諾書がないと本登記が入りません。なぜなら、Cの所有権は仮登記の本登記の際、職権で(本人の申請ではなく)抹消されてしまうからです。
一方乙区ではどうでしょう。
Bへの仮登記の本登記の際、Eが利害関係人になります。本登記の際、Eの承諾書が必要です。そして、Eの権利はC同様、職権で抹消されてしまいます。
同じ抵当権者ですが、EはDと違って、仮登記を知ってて設定しているからです。
知ってて設定している以上、自分の権利が抹消されても仕方ないと考えられます。ちなみに、CもEも承諾する義務があります。もちろん、自分の権利が抹消されるのを喜ぶ人はいないと思いますが、これを「許可」する立場ではありません。絶対いやだといっても、裁判の判決でその承諾が擬制されることになります。
登記は自己責任です。登記されている以上、きちんと確認する必要があります。