Aさんが、「自分が死んだら(財産を)Bさんにあげる」と遺言に書いたら「遺贈(または相続)」です。
一方AさんとBさんが双方元気で意思能力がある時に、死んだら財産の移転が起こる「贈与契約」を結ぶ。それが「死因贈与」です。
本人の意思のみでできるのか、相手との契約行為で行うのか、それが大きな違いと言われます。その通りです💡
今回は登記実務のお話を少しご紹介します。
①遺贈
この時は、なぜ、財産がAからBへいくのか、その理由を示すための書類は、ずばり「遺言」です。公正証書の場合は「正本」または「謄本」。自筆の場合は、検認した旨の証明がついた自筆証書遺言の原本を法務局に提出します。
②死因贈与契約
契約を結んだ時にAさんBさんは2人で署名捺印をした契約書を作成しているはずです。
ですが、登記の際、この契約書を提出しなくても、司法書士の作成した「登記原因証明情報」を提出すれば足ります。
この「登記原因証明情報」とは、司法書士が作成する書類で、「登記の原因となる事実または法律行為」として「いついつAとBが契約を締結した」「その後Aが死亡した」「よって、不動産の名義がAからBへ移転した」といった具合に、その事実を報告形式で書面に起こしたものです。
これは、売買も同様で、「売買契約書」の実物をつけなくても「原因証明情報」に「いついつAとBが売買契約を締結した」「移転日は売買代金全額を払い終えた日とする特約がある」「いついつ、売買代金を支払った」「よって所有権が移転した」といった経緯を書面に起こすことで、契約書の代わりとします。
勿論、「いついつ、BがAに残代金を支払った」とか「いついつ、AとBが契約をした」といったことを、司法書士が書面にする以上、その事実行為が本当に本人の意思で行われたか、確認をした上でそれが事実であることを担保し、責任をもって作成するものです。
「贈与」でも「売買」でも、「財産分与」でも、何でもそうですが、契約書ではなく、原因証明情報を作成することがほとんどです。そして「死因贈与」以外は、AもBも生きています。時間的にもブランクはありませんから、双方の本人確認意思確認を確実に行うことができます。
ところが死因贈与だけは、この原因証明に責任を持つことが難しいですよね。勿論、生前からのお付き合いで、契約時の確認がとれていれば別ですが、Aが死亡した後に依頼を受けた場合などは、その時点でAの本人確認意思確認はできません。いくら契約書が残っていても、「本物なのか」「その時、ご判断能力がしっかりしていて、周りからそそのかされた訳でもなく、ご本人の意思で契約を結んだのか」そこが不明確な場合は、原因証明に責任が持てませんから、作成すべきではないと思います。
と、すると、死因贈与契約についても、契約書以外に、本人の意思であるものを裏付ける画像なり、診断書なりがあった方がいいと思いますし、必須という決まりはないですが、公正証書で作成することの意味は大きいと思います。
契約書も遺言も、実現しなければ意味がありません。
ちなみに、死因贈与契約でも遺言同様「執行者」をつけることが可能です。
登記では「権利者(不動産取得者)」と「義務者(不動産あげる方)」が両方協力して行いますが、この時の義務者は、
・執行者あり:執行者
・執行者なし:相続人全員
となり、他の相続人と何か問題を抱えていたり、特定の相続人が非協力でネックになるような場合は、この違いはとてもとても大きな労力の違いを発揮します。
どなたも気づかないと思いますが、ピアスがクリスマスカラー。そういうことも勝手に楽しんでいます(笑)