不動産売買と債務引き受け

抵当権がついている不動産は、そのままでは売却できません。
AさんからBさんへの売買でBさんが売買代金を銀行から借りる場合、Aさんの抵当権を抹消し、移転した後新たに抵当権を設定します。

ところが、個人法人間の売買で、売り主である個人のAさんと買主の法人に関係があるようなケースでは、
*【・抹消→・移転→・設定】 をしないで、個人の抵当権の債務を引き受けることがあります。
債務を引き受ける場合は、原則もとの抵当権の内容を引き継ぐことになりますので、他人同士ではなかなかやらないと思います。

ただ、法人格はちがっても実質同じ人がかかわるような場合に、先ほどの*の流れをとらないことがあります。

なぜなら違約金や手数料の負担が大きい場合があるからです。
銀行の融資は、繰り上げ一括返済した場合、 最初の返済時期や金額利率などとは別の形で 返済したことになるため、違約金がかかることがあります。それを考えると、原契約を活かした形で引き継いだ方が、手数料が安く抑えられるのです。
その場合の手続きの流れ↓
【*所有権移転A→B  *債務者の変更A→B(免責的債務引き受け)】


ところで債務の引き受けには、併存的債務引き受け:A→AB と、免責的債務引き受け:A→B があります。

併存的の場合は、もし一方が債務の弁済をした場合、他の債務者に請求ができる「求償権」を持ちます。
ところが、民法改正により、免責的の場合、BさんはAさんに求償権を持つことはできなくなりました。(民法472条の3)
Aさんは債権債務の関係から逃れたいために債務引き受けをするので、それを保護しようという考えによるものです。
求償権がないのであれば、対価の支払いがあって当然と思いますが、民法ではこれは禁じておりません。
債務引き受けの際5000万円の債務であれば、それと利息などの金額を払うことにより債務から逃れるのが一般的なのではないでしょうか。

先ほどの売買の話に戻りますが、
AさんからBさんへの売買ではA→Bに売買代金の債権が発生します。
AさんからBさんへ債務引き受けがあればB→Aに対価を請求する債権が発生します。

大体、これで同じ金額分は相殺し、差額分のみやり取りをします。

Aさんは不動産を手放す代わりに債務から逃れます。
Bさんは不動産を取得するための費用分の抵当権の負担が付きます。

結果、普通に借金して不動産買ったのと同じという訳です。

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