未成年者への贈与と登記申請

私たち司法書士は、不動産売買や後見といつも隣り合わせなので、当事者がその行為をする能力があるかどうか、常に考えます。主に民法で話題になる能力には次の三種類があります。

①権利能力:権利の主体となれる能力。これは意識して取得するというよりは、私たち人と法人には認められています。
②意思能力:意思決定できる能力。つまり、内容を理解した上で物を選んだり決定する能力のこと。
その内容にもよりますが、小学生がお店にいって、好きな文房具を選んで買ったりするのは、この能力が備わっていると言えます。自分で「いい」「悪い」が分かって、意思決定ができている訳です。
③行為能力:1人で確定的に法律行為を行うことができる能力。

高齢者や子供などに後見人をつけることがありますが、これは③の行為能力が備わっていないからです。制限行為能力制度と呼ばれます。「未成年」「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」のことです。
いわゆる「契約行為」が単独ではできないことになります。
認知症の方は、後見人がつかないと、不動産を売買できません。
売買というのは「契約行為」だからです。

では、「贈与」ってどうなんでしょうか。
贈与は、「贈与契約」という契約行為です。あげる人、もらう人が「あげます」「もらいます」の意思表示をしないと成立しませんよ。だから、「贈与契約書」を作成して、残しておきましょう。と、税理士の先生は良くおっしゃいます。
契約行為である以上、行為能力がないと原則できない訳ですが、おじいちゃんおばあちゃんが、孫に贈与するのは、実際良くあります。
あれ?と思ったあなた。これはなぜだと思いますか?

答えは民法5条にあります。
「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない」
つまり、本人にとって、メリットしかない行為については行為能力がなくてもOKという訳です。

したがって、贈与は贈与でも、一定の義務とセットでもらう「負担付き贈与」であれば話は違います。
+の財産をもらうだけなら、行為能力者であっても可能です。

さて、ここで司法書士としては、第四の能力。それは、
④登記申請をする能力です。

これは、行為能力とは別と考えられています。

「登記申請行為は、登記所に対して登記を要求する公法上の権利であって、民法の法律行為ではなく、既に効力の生じた権利変動の公示を求めるものであるから、債務の履行に準じた行為である。したがって、法定代理人の同意がなくとも、未成年者による登記申請行為は、意思能力があれば認めても差し支えないものと解している(最判昭43.3.8判時515・59)

難しく書いてありますが、簡単に言ってしまうと、「登記って、既に権利変動が起こった後の、事務手続きでしかない」から、行為能力まではいらない。」といった感じです。。。

未成年でも、自分の権利を保全するための登記は可能なんです。

ただし、未成年が司法書士に登記を委任したら、これは「委任契約」になりますので、ここは、親権者あるいは未成年後見人の同意が必要であると考えられています。

だから、先ほどの結論は、正確にいうと「未成年でも、意思能力があれば、本人申請で登記を一人でできる!」が正しいです。

【過去の想いでシリーズ】弊所近くに桐蔭学園という私学がありますが、敷地の中に美術館があります。以前そこであった「黒井健絵本原画の世界」が本当に好きでした。ポスターは「手ぶくろを買いに」のお話です。きつねの親子の物語。「人間は、いいものかしら。」「人間はいいものかしら。。」とお母さんぎつねがつぶやきます。

もう一枚は、同じ黒井健さんの「ぶたのモモコはバレリーナ」という絵本です。とってもかわいいんです。
黒井健さんは、新潟市出身だということを、この展覧会で初めて知り、とても嬉しかった記憶があります。皆様も、お仕事で、疲れた時にどうぞ。


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