相続放棄の行く末

最近、なぜか手ごわい案件が続いております。
私は、たとえ手間がかかっても、お客様と長期的にかかわれるような業務をしていきたいと特に最近強く思ってます。案件が終わると、「終わったー」って乾杯したくなるような仕事がしたい。

先日お伺いした地元のお客様は、長い間生き別れて疎遠だった御父様のご相続について放棄をしたいと、そういうご相談でした。通常放棄は、借金がかなり超過している場合が多いですが、財産に関してはむしろ結構あったのです。
それでも、放棄を強くご希望でした。

どんなに疎遠な相続人でも、いわゆる死後事務など、何もしない訳にはいかないことも沢山あります。

特に、会社経営者でもあり、株主でもあり、特許権があったり、海外バンクにお金があったり、、現役で、終活に手を付ける余地もないままにお亡くなりになった方でした。

最後に病院で会話を交わした時、負担はかけられないから、全て放棄でいい。ただし、葬式と最低限の整理のために、息子さん受取の保険の死亡保険金を使ってそれに充てるように。と言い残してお亡くなりになったのです。

相続人はお子様ご兄弟2名でしたが、全員放棄の意思は固い。

さて、ここでクイズです。
放棄した相続人でも死亡保険金は受取できるか。
答えは〇です。この方はそのケースです。

そして、更に、税金はどうなるか。生命保険の死亡保険金は、相続財産とは切り離された、受取人固有の財産のため、、相続財産ではありません。ですが、本人が死亡したタイミングでお金が流れるのが、相続に似てるので、「みなし相続」として相続税がかかります。

例えば、その死亡保険金が2000万円だった場合、基礎控除の範囲内なので非課税となりますか?(保険以外に財産は放棄した沢山あると仮定します)
答えは×です。
相続税の計算では、その方が受け取ったもの以外の財産も含めて全体の財産をみた上で税率が決まります。

つまり、その方は、放棄した財産も含めて全体がいくらなのか把握した上で税務申告をする必要があります。(総財産が基礎控除を超えていた場合)

ここで、矛盾が生じますよね。おそらく手残りがあるであろう相続財産の受取を放棄してでも、かかわりたくないというご希望の強かったお客様が、結局大量にある財産調査の義務を負う。。。

更に、通常死亡保険金は基礎控除額とは別に相続人1人あたり500万円の非課税の枠がありますが、それが適用できるのは、相続人のみとなります。放棄したらこれも使えないのです。

色々理不尽と思ってしまいました。

今回のケースではご本人のお子様2人が放棄をすると、妹さん2人が新たに第三順位の相続人になりますが、全員が放棄をした後、財産をすべて国庫に帰属するまできちんとすれば、全体の財産はもとから保険だけという扱いになります。

ところが、ただ全員が放棄をしただけで、財産はそのままであれば、良く分からない不明の財産の総額に対して課税がされる。

それが結論です。

全員が放棄をして、相続人が誰もいなくなったケースでも、自動的に財産全てが国に帰属する訳ではないんです。きちんと国庫に帰属するためには、順を追って裁判所も絡む手続きを進めていく必要があり、それをやる人の金銭的時間的負担もかなり大きいものがあります。どんなにタイトに頑張ったとしても、相続税の申告期限10ケ月は超える期間かかります。

相続放棄しても他に相続人がいるケースでは、放棄した相続人は負担もなく関係から抜けられますが、全員放棄してしまった場合は、何ももらえないだけでなく、結構まとまった手出しを負担しなくてはいけないケースも多いです。ゼロではなくマイナスです。

亡くなったご本人は、残された者の負担のことを考えて保険だけは残してあげたいというお気持ちはすごく伝わりますが、死後事務のための実費を残したいということなら、他に対策はあったと思います。

考えさせられます。放棄の手続き自体は、簡単ですが、色々考えることが沢山あります。
周辺知識も大事。

私は、運動神経というものが悪いを通り越して全くありません。小さいころから、体育きらい。でも、娘は速いんですよ。似ないで良かったと喜んでます。似ないで欲しいと思うことばかりだなぁ。。この前、帰る際に寝ていて、ぎゅっと抱きしめないままに帰ってしまったのが、本当に残念です。
どんなに運動神経なくても、生きていけるんで、大丈夫です!!

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