自筆証書遺言紛失事件(検認調書を使った登記)

【ご相談者様】
ご主人が死亡。お子様なし。法定相続人は、奥様とご主人のご兄弟(6名)
ご主人は「全ての財産を奥様に相続させる」と書いた手書きの遺言書を残していました。

【お手続き内容】
遺言書がなければ、奥様とご主人のご兄弟で遺産分割の話し合いをするところでした。
ところが、遺言書があれば、ご兄弟には遺留分はありませんので、100%奥様が相続されることに争いはありません。従って、ご兄弟の関与なくお手続きを進めることができます。

何の問題もなく、お手続きできそうなケースです。
ところが、問題発生。後日お客様よりお電話が。。
「先生。何度さがしても、主人の遺言書がないんです。」自筆証書遺言紛失事件。

自筆は手書きが条件のため、手書き本体は1通しかありません。
奥様が大変慌てた様子だったのが、電話ごしからも伺えました。

【結論】
今回のケースでは、登記可能です。
自筆証書遺言は、発見された後家庭裁判所で「検認」手続きを行います。
本体に、裁判所で「検認済証明書」を合綴してもらい、それをもって初めて、各方面相続のお手続きが可能となります。

お客様は一度、裁判所で「検認」を行い、その後紛失されました。

一度検認を行うと、裁判所に記録が残ります。
これを「検認調書」といい、検認後5年間は保管されます。
この検認調書の謄本をもって、検認済みの自筆証書遺言として手続きが可能です。
(登記研究585P137)

現物お見せします。↓こちら

「自筆は自筆が条件なのに、その証拠となるものが写しってどうなの?」
って、思うんです。私も最初思いました。
でも、上記のように、検認調書には、遺言書本文の写しもついてます。
したがって、検認の時遺言がどうだったか、少なくともその形態が自筆で、その時書いてあった内容については「検認調書」の通りであることが担保されている訳です。

自筆の遺言は検認の後、保管者が保管し手続きを進めるため、その後保管者が追記したりすることもできます。つまり、検認した当時の「本文」と「今手元にある遺言書の本文」が不一致である可能性がゼロではありません。

一方、検認調書はその後改ざんがあったとしても、検認当時にはなかったことが明白です。従って、こっちの方が信憑性高いと言えます。

【まとめ】
検認した後の自筆証書遺言は、なくしちゃっても何とかなる!
あきらめずに、司法書士にご相談ください。

もっとも、自筆は「検認前」に無くす。検認前に、追記してしまう。。。等、その前に起こった事由に対しては対処できません。検認して初めて、外部機関に「控え」が保存されるのです。
公正証書であれば、相続発生前の時点で、第三者の目が入り、公証役場に保管されますから、いずれにせよ、公正証書の方が「改ざん」「紛失」リスクの点から明らかに安全なのは間違いございません。

遺言は公正証書にしましょう!

今度のオフィスはデスクを黒にしてみました。一目ぼれしたバラです。「エレガントドレス」というネーミング。お花屋さんにいた時から、素敵でした。