財産の一部だけの遺言と持ち戻し免除

一般的な遺言は、大きなものから特定して書いていくことが多いですが、残った細々した財産については「その他の財産」「これから見つかる財産」として最後に指定することが多いです。そうすると漏れがないため、後々相続人が判断に困ることがありません。

ところが、特に気がかりな特定の財産のみについて「〇〇にあげる」とする遺言も有効に成立するとされています。
その財産については分かりますが、その他の財産についてはどうなのでしょうか。

指定が無かった分については、全く遺言が無かった場合と同様、遺産分割協議をして決めるか法定相続で分けるかどちらかになります。(民法902条②)

ここで問題になるのが特別受益です。
相続人が3人いたとして、一部の財産はAさんが遺言で相続することになりました。他の財産についてはAさんBさんCさんで、その他の財産に対して法定相続で分けるのか。もしくは全体の財産に対しての法定相続で分けるべきところ、Aさんは一部もらっているのだから、その他の財産についてはその分少なくする調整がされるのか。ここが問題です。(この調整のことを特別受益といいます)
遺言で指定された財産の一部が特別受益とされた場合は、Aさんがもらった財産を相続財産に戻して(これを持ち戻しといいます)法定相続分が計算されることになります。
※特別受益について民法903条

判例ではそのご家族の状況に応じて、Aさんがもらった分を特別受益とした場合と、そう認めなかった場合があります。遺言者がどのようなつもりでその遺言を書いたのかが尊重されるといわれています。
もし、遺言者が、一部の財産をAさんにあげたとしても、Aさんは残りの財産については法定相続で更にもらうことを前提として遺言を書いたのであれば、その意思をはっきりさせておくべきです。

これが「持ち戻し免除の意思表示」です。
「第1条  〇〇はAさんにあげる。以上(他の財産については指定なし)
 第2条  1条の規定はこういう意図で書いたものであるから、民法903条
      第1項に規定する相続財産の算定上、上記財産の額は相続財産の額
      に加えないものとする。                  」
こういう記載があれば、持ち戻しをしないという意図がはっきりしますので、相続人も分かりやすいです。

これでもいいのですが、できれば遺言書で
Aさんにあげる以外の財産も特定して、「〇〇はA3分の1、B3分の1、C3分の1の持分で相続させる」と全部具体的にかいてあげた方が分かりやすいので、是非そうしてください。
全部書く元気がないけど、とにかく気がかりな財産だけでも書いておきたい方には「一部の相続+持ち戻し免除」がぴったりです。

ちなみに持ち戻し免除は遺言に限ったことではありませんので、生前に贈与した際に定めても有効です。ただし、きちんと文書にしておくのが望ましいですね。

真ん中の子は、最後まで怖がって、全く近づこうとしないため、一切写ってません。下の子の方が積極的!そして、たまたま待合室でめくった雑誌に載っていた絵が好きだなぁと思った件。動物に触れると優しい気持ちになれます。飼うの、、無理だけど。



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